東京都文京区Tハウス

桜並木と川を借景に、北へ大きく開いた住宅東京都文京区に建つ、木造3階建て + ロフトの「小さくても良い家」。

外観・玄関

北側の川沿いには桜並木が続き、川の反対側は公園になっています。三方を建物に囲まれたこの敷地で、もっとも豊かな景色が広がるのが北側でした。そこで、通常なら閉じがちな北面に大きな窓を開いた、印象的な外観としています。昼は桜並木を映し込み、夜には室内の灯りが窓からもれて、建物全体が行灯のようにやわらかく浮かび上がります。街並みの中で、静かに存在を主張する佇まいです。

外観(昼) 外観(夜景)
玄関 玄関

LDK・リビング

北側の桜並木と川を、そのまま室内の借景として取り込んでいます。四季で表情を変える桜、水面のきらめき、対岸の公園の緑——大きな窓が、その景色を絵画のように切り取ります。一般に北側採光は暗くなりがちですが、この家は違います。南側に設けた階段室兼吹抜けがもう一つの光源となり、上から降りてくる光と北の窓からの光が重なることで、一日を通して明るく開放的な空間になっています。

LDK LDK
リビング リビング

キッチン

限られた面積の中で、無駄なくコンパクトにまとめたキッチンです。単に小さくするのではなく、洗濯機置き場を隣接させることで、料理と洗濯という二つの家事を最短の動きでこなせるようにしました。小さな住宅だからこそ、動線の一歩一歩が暮らしやすさに直結します。

キッチン キッチン

建築家コメント

この住宅の敷地は、東・西・南の三方を3階建ての住宅に囲まれ、抜け感のない条件でした。一般的な家づくりであれば、日当たりを求めて南側に窓を大きくとるところです。しかしこの敷地では、南に開いても隣家の壁が迫るばかり。設計者として、まず敷地に立ち、どの方角に何が見えるかを丁寧に確かめることから始めました。

そこで目を向けたのが、北側です。北側には桜並木と川、そして対岸の公園という、都心とは思えない豊かな景色が広がっていました。この素晴らしい眺めを、なんとか内部空間と生活に取り込みたい——それがこの家の出発点になりました。季節の移り変わりを、暮らしの中で自然と感じられる住宅にしたい。その思いから、常識とは逆に、北側へ特徴的な大開口の窓を設けています。

採光は南から、という定石をあえて崩したぶん、明るさは別の工夫で確保しました。建物中心の吹抜けを兼ねた階段室が、南側の光を家の奥まで導きます。北の窓からの景色の光と、南の吹抜けからの採光。二方向からの光が重なることで、北向きでありながら明るく開放的な空間が生まれました。

敷地面積14坪という限られた条件でしたが、吹抜けやロフトを立体的に活用することで、開放感と収納力の両方に配慮できたと考えています。面積が小さいほど、一つひとつの判断が暮らしやすさを大きく左右します。小さな住宅ほど、より設計力が大切になる——この住宅は、そのことを私たち自身にあらためて教えてくれた一軒です。

階段・動線

建物の中心に、吹抜けを兼ねた階段を配置しました。三方を囲まれて南から光を取り込みにくい敷地で、この吹抜けが南側の光をLDKの奥まで届ける光の井戸として働きます。階段室の窓の外には物干しスペースを設け、洗濯物を室内から出し入れできるようにしました。そして空間の中心を貫くのが螺旋階段です。らせんを描いて上下階をつなぐその姿は、単なる移動の装置を超えて、この家に印象的な表情を与えています。

階段 階段

寝室・居室

寝室からも、北側のビスタ(見通し)を借景として取り込んでいます。眠りにつく前も、目覚めたときも、窓の外には桜並木と川の景色が広がります。2つの居室にはそれぞれロフトを設けました。限られた床面積の中で、寝る場所とは別に、こもれる居場所や収納のスペースを立体的に足しています。

寝室・居室 寝室・居室 寝室・居室 寝室・居室 寝室・居室

洗面・水廻り

ホテルのように整えた洗面室です。毎日使う場所だからこそ、機能だけでなく気持ちよさにこだわりました。洗面室の外にはウォークインクローゼットを配置し、洗う・しまう・着替えるという朝の身支度が、短い動線の中でスムーズに完結します。

洗面・水廻り 洗面・水廻り

収納

個室の横にウォークインクローゼットを設けました。単なる収納にとどめず、照明をつけると間接照明のようなやわらかい光が生まれ、空間に奥行きと落ち着きを与えます。しまうための場所が、そのまま暮らしの質を高める仕掛けになっています。

クローゼット